私と彼と彼のアンドロイド

「まどろっこしいな。やっぱお前からやってこい。セカンドに実験するためにもお前が試さないとな」
「無茶言うなよ」

「奥さんに惚れられたいんだろ?」
「そうだけど……」

「だったらやるしかないだろ」
「……わかった」
 光稀は覚悟を決めて、頷いた。



 帰宅する光稀は、運転しながら彼女との出会いを思い出していた。
 初めて会ったとき、人見知りな光稀は小学生の音緒を託されておろおろした。

 彼女にリードされる形で研究所を紹介して回り、しっかりしたお嬢さんだな、と感心した。自分のたどたどしい説明もしっかり聞いてくれて、それが特に嬉しかった。
 なぜか懐いてくれて、何度も研究所を……自分を訪ねてくれるのが嬉しかった。

 彼女が成長するにつれ、眩しくなっていくことに気が付いた。
 留学で離れたときにはホッとすると同時にすごく寂しくなった。彼女がメールを送ってくれたりテレビ電話をしてくれたときには柄にもなくどきどきして、それでどうしようもなく彼女に恋をしているのだと自覚させられた。

 いつも女性には相手にされない。見た目もダサくて勉強ばかりしていた自分には、女性と親しくなる方法などわからなかった。思春期には女性と仲良くしている同級生を見るたびに、羨ましかった。
 彼女は年下だから意識せずに仲良くできた。妹のようにかわいく思っていたのに、気が付けばまばゆい存在となっていた。

 だが、自分は彼女よりも十一歳も上で、恋愛対象ではないだろう。いつか同年の男性に恋をして自分からは去っていく。それを見るのがつらい。