私と彼と彼のアンドロイド

「悪かったよ、だけどお前が愚痴るから」
「……ごめん。彼女がいつか『好きな人ができた』って言ったらいつでも身を引こうと思ってはいるんだ。だけど、それまでは一緒にいたい……女々しいと思われるかもだけど」
 だから清い関係のままでいたほうがいいと思った。彼女が本当に好きな相手と結ばれるために。

「小さいころから彼女を知ってるし、十一歳も違うからロリコンとか思われたくないし……」
 うじうじと愚痴をこぼす光稀に、祥吾はあきれた目を向けた。

「矛盾してるよなあ。彼女だって結婚してるならほかの男を好きにならないようにするだろうし、既婚者に言い寄る男なんてろくなもんじゃないだろ。お前はもっと自分に素直になれよ」
「だってそれは……」
 光稀はもごもごと口ごもる。

「男らしく彼女に告白したらどうだよ」
「拒否されたらどうするんだよ。一緒に暮らしているのに気まずすぎる。それで離婚なんてことになったら……!」
 あああ、と頭を抱える光稀に、祥吾は「つける薬なし」とでも言いたそうな目を向ける。

「僕は音緒ちゃんのためにかっこよくなりたかっただけなんだ」
「だったら自分の身なりを整えればいいだけだろ」

「え?」
「自信がないならセカンドで試そう。そのためのセカンドだろ」

「そっか……やってみよう。髪を整えて、服も……? 眼鏡もないほうがいいのか? どうせこいつのメガネは伊達なんだし。アンドロイドの見た目が人の印象に及ぼす影響の考察もできて一石二鳥だな!」
 目を輝かせる光稀に、祥吾はまた苦笑をもらした。