音緒はやがて、光稀の頬にちゅっとキスをして、それから顔を両手で押さえてぱたぱたとダイニングを出て行った。
「え? え?」
 光稀はキスされた頬を押さえてパニックになりながら書斎に戻った。

 パソコンデスクに向かい、悩む。
「どういうことだ? セカンドだと思ってたんだよな? で、キスしたってことは……彼女はまさか本当にセカンドが好き!?」
 光稀は頭を抱える。

「いや待て、セカンドと音緒ちゃんは会ったばかり。でも恋に時間は関係ないとか聞くし。だけどセカンドが好きってことは、俺も可能性が? いや待て、好きになってるんなら俺の可能性はないってことだよな?」
 頭をがしがしとかいて、それからタブレットを持って部屋を出書斎に戻る。そこでも煩悶を繰り返し、人の気配にダイニングに行くと、すでにシャワーを終えて着替えた音緒がいた。

 光稀は平静を装い、帰ってから初めて会った振りをした。
「お帰り。帰ってたんだね。メッセージしたけど、ごはんはデリバリーでいいかな」
「うん、ありがとう」
 答える音緒の声が、どこかぎこちなく聞こえる。
 一緒にタブレットでごはんを選びながら、光稀は心ここにあらずだった。

 まさか自分が恋のライバルになる日が来るとは。
 光稀は緊張と不安にさいなまれつつ、音緒を見た。

 彼女の周りだけ、きらきらと輝いて見える。
 音緒ちゃんは今日もかわいい!
 光稀は平静を装いながら、内心で激しく悶えた。