私と彼と彼のアンドロイド


***

翌日、授業の空き時間に部室にいた音緒は机に突っ伏していた。
その前では希世がタブレットで音緒の姿をスケッチしていて、大翔がマンガを読んでいる。

「……というわけなの」
「悩殺大作戦は失敗かあ」
「うん……ダメージでかい」
 はあ、とため息をこぼすとげらげらと大翔が笑った。

「そいつ、本当は男が好きだったりしてな」
「え!?」
 がばっと起き上がる音緒に、大翔は気圧されてのけぞる。

「希世の描いてるマンガってそんなんばっかじゃん」
「その言い方は腹立つ」
 抗議する希世に、大翔はふんっと笑う。

「どうしよ、もし本当にそうなら……」
「音緒もいちいち真に受けない!」
「からかいがいがあるよな」
 にやにやと笑う大翔に、音緒はむっとして彼を見た。

「でもアンドロイドがいるのってチャンスかもよ」
 閃いた、とばかりに希世が言う。
「どうして?」
「本人に聞けないこと聞いてみたら? だんなさんと同じ人格が入ってるんでしょ?」
「そっか……彼に知られずに本心を聞けるかも?」