私と彼と彼のアンドロイド

「話したくなったらいつでも話して。セカンドでもいいから」
「セカンドに?」

「僕の人格をコピーしたAIが入ってるからね。僕に近い答えをするはずだよ」
「そうなの……」

「今はテレビを見せて学習をさせてたんだけど……あ、電源落ちてる! 充電しないと」
 充電器を取りに行く彼に、音緒はため息をついた。
「私よりロボットに夢中みたい。あなたがうらやましい」
 つん、とセカンドの頬をつついて、音緒はまたため息をついた。

***

 書斎に戻った光稀は、どきどきする胸を押さえて大きく深呼吸をした。
「落ち付け、あれはパジャマ、深い意味はない」
 自分に言い聞かせるが、彼女の白い胸元やすらりとした足が脳裏に浮かんでしまい、ぱたぱたと頭上に手を振って妄想をかき消そうとする。

「彼女があんな無防備な格好をするのは、僕が男として見られてないからだ」
 光稀は深く深くため息をこぼす。

「さっきはよく我慢した、ちゃんと大人に見えたかな」
 ネグリジェの彼女はセクシーで、内心ではどきどきだった。彼女に大人の余裕があるように見えただろうか。

「彼女が僕と結婚したのはきっと研究所のため。僕をひきとめるためで、僕を好きなわけじゃないんだ。親戚のお兄さんくらいの気持ちに違いない」
 机の上にあった充電機と充電コードを手に、また呟く。

「彼女はまだ若いんだし、いつ離婚したいと言われてもいいようにしないと……。僕みたいなおっさんに好かれても嬉しくないだろうし」
 再度の深呼吸をしてから、光稀は廊下に出た。