私と彼と彼のアンドロイド

「ちょっと!」
 希世が怒ると、大翔はばつが悪そうに目をそらす。
「わりぃ、また失言。だけど、子ども扱いされてるとか言ってたし」
「キスもまだなんだっけ?」
 希世がたずねると、音緒は頷いた。

「結婚式は神前式だったから。披露宴はウェディングドレスだったけど……」
「いいなあ、もうウェディングドレス着れたなんて」
 希世はうっとりと頬杖をつく。

「結婚ってそんなに憧れるもんか?」
「ドレスが重要なんです!」
「そこは人によりますよ」
 慌てて補足する音緒に、希世がさらに言う。

「男だって好きな人となら結婚したいですよね?」
「……そりゃあな」
 大翔はちらりと音緒を見る。

「彼もそうかな。結婚してくれたってことは、期待してもいいのかな……」
「卑屈になる必要ないよ。結婚してやった、くらいに考えなよ! 若くてぴちぴちなんだから自信持って!」
「ありがとう」
 音緒は、えへへ、と照れて笑った。

「先輩もなんか言ってあげて。男から言われたほうが自信になるでしょうし!」
「んあ!?」
 大翔は顔をしかめた。

「ウィンザー効果ですね。第三者の言葉のほうが信じやすいっていう」
 音緒は期待に満ちて目をきらきらさせているため、大翔は仏頂面で目をそらす。