またコンビニ前のベンチに腰を下ろす。
フードを深く被り、夕陽に染まる街並みをぼんやりと見つめる。
あの警察官と顔を合わせ始めてから四日目の夕方。
――いつものように、秀人が現れるか、無意識に通りを見渡してしまう自分がいた。
昨日までは偶然の再会のように思えたが、今は少しだけ、会うのを楽しみにしている自分がいる。

遠くで巡回の足音が近づく。
「今日もここにいるのか」
落ち着いた声に、浪は肩をすくめるだけで答え、視線を逸らさずに秀人を見つめる。
この強制も押し付けもない、ただそこにいる存在が、妙に安心を感じさせる。

最初は挨拶だけだった会話も、少しずつ増えてきた。
「学校はどうだ」
「今日は暑かったな」
短い質問に浪は首を傾げて答える。
返答は変わらず簡潔だが、互いのやり取りに少しの感情が生まれ、夕方の時間がわずかに待ち遠しいものとなって、日々を彩る。

変わらず夕陽の光が街路樹やネオンに反射し、遠くの車の音や通りのざわめきが二人を包む。
毎日の短い再会は、積み重なる。
浪はフードを軽く引き直し、視線を遠くに泳がせる。
秀人も微笑むことなく立ち、短く「気をつけて帰れ」と告げる。

たった数分のやり取りでも、浪にとっては少しずつ心を寄せる時間になっていた。
四日目の夕方、平日の静かな時間の中で、距離は変わらなくとも、確かに日々は育っていく。