月曜日、夕焼けが街を染める18時頃、浪はコンビニ前のベンチに座っていた。
フードを深く被り、手元のスマホを弄りながら、通り過ぎる人々や車のライトを淡々と見送る。

その時、坂木秀人の姿が見えた。
巡回の途中、落ち着いた足取りで近づいてくる。
「こんにちは。この前は遅くまで大丈夫だったか?」
穏やかで誠実な声に、浪は肩をすくめるだけで答えず、視線も逸らさない。

秀人はベンチの横に立ち、少し距離を保ちながら声を続ける。
「今日もここにいるのか」
言葉は短いが、前回とは違う穏やかなリズムが漂う。
浪は微かに肩を揺らし、フードの隙間からわずかに笑みを覗かせるだけ。
言葉は交わさなくとも、また互いの存在を確かに意識している空気が流れる。

街路樹の影とネオンの光が二人を包み、車の音が遠くで響く。
夕方の空気は金曜日の夜とは異なる、穏やかで静かな時間を作り出していた。
浪は立ち上がる気配も見せず、フードを軽く引き直す。
秀人もまた、微笑むことなく距離を保つ。

数分の再会だが、互いの呼吸や間合いで、前回とは少し違う安心感が芽生え始めていた。
夕方の光に照らされながら、二人だけの静かな世界がゆっくりと広がっていく。