十六日目の金曜夕方。
風はさらに冷たくなり、街の空気が冬の匂いを帯び始めていた。
秀人は、昨日と同じように18時頃にコンビニへ向かう。
けれど、今日もそこに浪の姿はなかった。
昨日よりも早く着いたつもりだった。
それでも、ベンチは空のまま。
秀人は足を止め、しばらくその場に立ち尽くした。
人の出入りするコンビニの灯りだけが、静かにあたりを照らしている。
ベンチにゆっくりと腰を下ろす。
ポケットの中で、またスマホの明かりを点けた。
18時を少し過ぎた時刻が、ただ無言で光る。
その画面を見て、ようやく自分が何をしているのかに気づく。
——まるで、誰かを待つのが当たり前みたいだ。
ふと笑みが漏れる。
職務でもなく、義務でもなく、ただあの時間が心地よかったのだと気づいた。
浪の何気ない「今日は元気?」の声。
それに返す「元気だよ」という言葉。
それだけのやり取りが、思っていた以上に一日の終わりを柔らかくしていた。
風が吹き抜け、フードを被った学生が前を通り過ぎる。
その後ろ姿を一瞬、浪と見間違えて、秀人は苦笑した。
空を仰ぐと、薄い雲の向こうにかすかに星が見える。
深く息を吸い込み、目を閉じた。
胸の奥で、何かがすっと静まっていく。
「……よし」
小さく呟いて立ち上がる。
手袋のない手が、冷たい風を切るようにポケットへ戻った。
振り返らずに歩き出すその背中に、街の灯りが淡く差し込んでいた。
風はさらに冷たくなり、街の空気が冬の匂いを帯び始めていた。
秀人は、昨日と同じように18時頃にコンビニへ向かう。
けれど、今日もそこに浪の姿はなかった。
昨日よりも早く着いたつもりだった。
それでも、ベンチは空のまま。
秀人は足を止め、しばらくその場に立ち尽くした。
人の出入りするコンビニの灯りだけが、静かにあたりを照らしている。
ベンチにゆっくりと腰を下ろす。
ポケットの中で、またスマホの明かりを点けた。
18時を少し過ぎた時刻が、ただ無言で光る。
その画面を見て、ようやく自分が何をしているのかに気づく。
——まるで、誰かを待つのが当たり前みたいだ。
ふと笑みが漏れる。
職務でもなく、義務でもなく、ただあの時間が心地よかったのだと気づいた。
浪の何気ない「今日は元気?」の声。
それに返す「元気だよ」という言葉。
それだけのやり取りが、思っていた以上に一日の終わりを柔らかくしていた。
風が吹き抜け、フードを被った学生が前を通り過ぎる。
その後ろ姿を一瞬、浪と見間違えて、秀人は苦笑した。
空を仰ぐと、薄い雲の向こうにかすかに星が見える。
深く息を吸い込み、目を閉じた。
胸の奥で、何かがすっと静まっていく。
「……よし」
小さく呟いて立ち上がる。
手袋のない手が、冷たい風を切るようにポケットへ戻った。
振り返らずに歩き出すその背中に、街の灯りが淡く差し込んでいた。
