十二日目の月曜夕方。
秀人はいつものように18時を少し回った頃、コンビニ前のベンチへ向かった。
この時間になると、浪はいつもベンチに静かに腰を下ろし、小さく温かい缶ジュースを手にしている。
だが、その日は違っていた。
ベンチは空っぽで、風が落ち葉を散らしているだけだった。
行き交う人の声と足音ばかりが耳に残る。
いつもあるはずの影が見えないだけで、街の風景がやけに広く、寒く感じられた。
少し迷ってから、秀人は自分からベンチに腰を下ろしてみた。
その視線の先、車のライトが通り過ぎては遠ざかる。
人の気配はあるのに、どこか空白のような静けさが漂っていた。
どれくらい時間が経っただろうか。
ふと足音が近づき、浪が現れた。
息を整えながら、短く「悪い、遅れた」とだけ言い、秀人の隣に立つ。
「今日は元気?」
ぽつりと口にされたそれは、いつもより少しだけ低く、掠れていた。
秀人は静かに頷く。
「うん。元気だよ」
浪は一瞬だけ目を細めて笑い、すぐに視線を逸らすと、手をポケットに入れたまま言った。
「……じゃあ、これだけ」
秀人が何かを言いかける前に、浪は歩き出していた。
その背中が街の明かりに溶けていくのを見送りながら、秀人は胸の奥に小さな違和感を覚えた。
いつもの時間、いつもの場所。
けれどその日は、また少しだけ、違っていた。
秀人はいつものように18時を少し回った頃、コンビニ前のベンチへ向かった。
この時間になると、浪はいつもベンチに静かに腰を下ろし、小さく温かい缶ジュースを手にしている。
だが、その日は違っていた。
ベンチは空っぽで、風が落ち葉を散らしているだけだった。
行き交う人の声と足音ばかりが耳に残る。
いつもあるはずの影が見えないだけで、街の風景がやけに広く、寒く感じられた。
少し迷ってから、秀人は自分からベンチに腰を下ろしてみた。
その視線の先、車のライトが通り過ぎては遠ざかる。
人の気配はあるのに、どこか空白のような静けさが漂っていた。
どれくらい時間が経っただろうか。
ふと足音が近づき、浪が現れた。
息を整えながら、短く「悪い、遅れた」とだけ言い、秀人の隣に立つ。
「今日は元気?」
ぽつりと口にされたそれは、いつもより少しだけ低く、掠れていた。
秀人は静かに頷く。
「うん。元気だよ」
浪は一瞬だけ目を細めて笑い、すぐに視線を逸らすと、手をポケットに入れたまま言った。
「……じゃあ、これだけ」
秀人が何かを言いかける前に、浪は歩き出していた。
その背中が街の明かりに溶けていくのを見送りながら、秀人は胸の奥に小さな違和感を覚えた。
いつもの時間、いつもの場所。
けれどその日は、また少しだけ、違っていた。
