十一日目の金曜夕方、コンビニ前のベンチに、2人はいつものように並んで腰を下ろす。
冷え込んだ空気が肌を刺し、落ち葉が舞う秋の夕暮れを街の向こうに眺めていた。

ぽつりと浪が口を開く。
「今日は元気?」
秀人は少し笑みを浮かべ、目を細める。
「元気だよ」

温かい缶ジュースを手に、二人は並ぶ。
浪のフードはしっかりと被られ、首は見えないが、秀人は前回のことが頭に浮かび、首のアザを不良たちによるものだと勝手に判断しつつ穏やかな声で尋ねた。

「……最近、あの子たちと、夜遅くまで出歩いたりしていないか?」
声は穏やかで、問い詰める様子はない。
それを浪は、出会った初日の不良達とたむろしていた時の心配を、今も変わらず抱いているのだと判断する。

浪は少し視線を伏せ、缶ジュースを手のひらで包みながら答える。
「……もう、行ってない」
秀人はそれ以上を求めず、軽く頷いた。
沈黙の中で、冷えた空気と温かいジュースの温もりが交差する。

秀人は自然にベンチの背に寄り、少し肩を落ち着かせるように座る。
浪はフードの影に顔を隠したまま、夕暮れの街を見つめる。

「無理に話さなくてもいい」と秀人は柔らかく言い、短く微笑む。
その言葉に、浪の中で微かな混乱が芽生える。
確かにもう不良たちとは会っていないのに、何も言わなくていい、と促されることで、なぜか心が揺れるのだった。
言葉少なに交わされる会話の中で、二人の間は温もりと同じように交差し始める。

落ち葉が舞い、遠くで車の音が響く中、十一日目の夕方は、変わらぬ穏やかさの中で、どこか不穏なあたたかさが2人を包んだ。