金曜日、深夜のコンビニ前、不良たちはいつものように騒いでいた。
笑い声や煙草の煙、缶ジュースをぶつける音が、夜の静けさを軽やかに切り裂く。

その中で、灰谷浪はフードを深く被り、ベンチに腰を下ろしていた。
彼の存在は掴みどころがなく、どこか軽やかで、しかし確かな存在感があった。
飄々とした仕草に加え、目元や口元に浮かぶわずかな笑みは、周囲の視線を自然に引きつける。
誰も、その奥に何か弱さや迷いがあるとは想像できない。

「おい、楽しんでる?」
隣の仲間が声をかけるが、浪は肩をすくめて軽く笑い、「まぁ」と返す。
その態度は冷たくも見え、同時にどこか掴みどころがない魅力を漂わせていた。

夜風がフードの隙間をかすめ、浪は煙草を手に取り、軽く肩を回す。
その姿は、まるで夜の街に自然に溶け込む影のようでありながら、目を惹く存在でもあった。

その時、パトカーのサイレンが夜の静けさを切り裂く。
巡回中の若い男性警察官、坂木秀人が、落ち着きと優しさを帯びた表情で近づいてきた。
それに仲間たちは慌てて散り、コンビニ前には浪一人が残される。

秀人は腰を曲げて浪と目を合わせ、静かに尋ねる。
「君、帰る場所あるの?」

その声は淡々としているが、どこか温かみがあった。
浪は軽く目を細め、首をわずかに傾げる。
返答はない。
しかし、フードの下の顔は冷たく、飄々としていて、弱さは一切見せない。
ただ、その存在感だけが、夜の街に静かに揺らぎながら確かに立っていた。