「…大口開けて食べても笑いませんか?」
ははっ、と社長が破顔した。
「俺だって大口を開ける。お互いさまだ」
二人して黙々と大きく口を開けてバインミーを頬張る流れになった。こういう食べ物って一生懸命にならないと食べ終わらない気がする。美味しいけど大変。大変だけど美味しい。
半分ほど食べて、コーヒーを飲むとこちらも熱々で美味しかった。
「文香さん、口元」
え、と社長の方を向くと、ふっと唇の端を指で拭われた。
「ソースがついてた」
恥ずかしくなって思わずうつむいてしまう。
どうにかバインミーを食べ終えて、カップに残ったコーヒーを飲む。空はすこんと晴れていて、秋の陽ざしのおかげでぽかぽか感がある。
私はバレエ教室が終わると即、家に帰ってしまうので、こんなに外でのんびりしたのは久しぶりだ。
「どうかな屋外デートは。寒くない?」
社長も食べ終えてコーヒーのカップをもてあそんでいた。
「はい。陽ざしがあるので寒くないです。こんな風に公園に来ることもあまりないので、新鮮だなあって。社長はよく来られるんですか?」
「いや、そうでもないな。このバインミーのキッチンカーは、モールの駐車場に出ることもあるんだ。手短に食べたい時はちょうどいい」
モールというのは、ジュエリーブラッドが入っているショッピングモールの事だろう。
「社長は毎食、懐石料理やコース料理なのかと思ってました」
「そんなことないよ。もっと普通。夜中まで残業した時に食べるカップ麺はうまいな」
私は目を丸くした。
「意外でした。結構庶民的なんですね」
「まあ、俺はなりあがりだしな……そうだ、フリスビーをやらない?」
そう言って、社長は持っていたトートバッグからピンク色のフリスビーを取り出した。
三十分後。私と社長ははあはあ息を切らして、またこのキッチンカーのところまでやってきた。
フリスビーを投げる、キャッチできず走る、また投げる。キャッチ…の繰り返しで、大した運動になった。お互いバテて笑い合った。キッチンカーに確かアイスコーヒーがあった、と社長が言ってお互いカラカラに渇いた喉を潤すことにした。
ず、と音を立てて二人してアイスコーヒーを飲んだ。一気に飲んでやっと身体が落ち着いてきた。
「はは。思ったよりきつかった……君はあまり汗をかいていないようだけど」
「あ、普段バレエ教室に通ってるからかもしれません」
「バレエ?ほんとに?」
ぐっと社長に詰め寄られた。バレエの何がそうさせるんだろう。
「ええ。初めて3年になります」
そうなのか……と、社長は考え込んでしまった。宝石好きのお嬢様はバレエはしないんだろうか。お嬢様っぽいおけいこ事だと思うけど。
「それはいいことを聞いた。ちなみに休日はどんなことをして過ごす?」
私はちょっと考えてアイスコーヒーを飲むのをやめた。
「そうですね。バレエ教室の後は家に直帰で、自分の部屋で本を読んだりネット配信の映画を観たりするのが好きです。部屋の照明を少し暗くすると、すごく静かになった気がして落ち着きます」
ああ、と社長は頬を緩めた。
「わかるよ。海外出張の時、ホテルの部屋の照明が暗くて。なんだかしっくりくるんだよな。日本の通常の照明は人間にとって明るすぎるらしいから」
ふわっと秋の風が私たちの間を通り抜けた。気持ちのいい風だ。
「社長はアウトドア派なんですか?あまりおうちにいないみたいな」
社長はいいや、と首を振った。
「アウトドアでもなんでもないから、キャンプなんかは苦手な方だ。今日はどうして屋外かと言うと……君が男性とつきあった事がないと言うから」
え、と私は社長を見た。社長は公園の芝生を眺めてアイスコーヒーを飲んでいる。
「私が初デートだから、健全な公園デートにしてくれたんですか?」
実を言うと高校性みたいなデートだな、と思っていた。
「うん。まあ、そうだ」
これまでの社長のやり方が強引なものが多かったので、今日も社長に高級なデートで振り回されるんだろうと思っていた。でも全然ちがった。私の事を考えて、高校生カップルみたいなデートをしてくれたんだ。
それはとても意外で……とても嬉しいことだった。
「お気遣い、ありがとうございます。でも私、お酒を飲むのも好きです」
んっ、と社長が目を見開いた。
「いや、そんな子供扱いしたわけじゃない」
「そうですか?この後、女子の好きそうなパフェの店とか行こうと思ってませんでした?」
社長は私の目を覗き込んだ。
「どうしてわかるんだ……」
私は声を出して笑った。ベタすぎる。恋愛百戦錬磨の社長でもこんな事、あるんだ。
「君は、そうやって笑っている方が素敵だ」
目を細めて微笑む社長にそう言われて、心臓が跳ねた。この人はときどき私をどきりとさせる。それはすごく整った美麗な顔のせいだけじゃないと思うのだが。
社長はトートバッグから分厚いスケジュール帳を取り出した。
「お互いの毎日の行動パターンを確認しとこう。俺はほぼ公休はナシ。休みが取れた時は早めに君に言うよ。朝は五時に起きてランニングする。帰ってきてシャワーを浴びて六時半には朝食。八時まで新聞や読書をしてそれから出勤。帰りは不規則だ」
私は一週間後、社長の住む部屋で暮らすことが決まっている。私の部屋にはもう私用のベッドが置かれているそうだ。手早い。私も仕事から帰ったら荷物をまとめるのを繰り返すことになるだろう。
男性と一緒に暮らすのにドキドキしないと言ったら嘘になる。今日のこのデートと同じで対男性とのことになると、私は何でもかんでも初心者なのだ。果たして社長がお気に召すような毎日なるだろうか。
私も自分のスケジュール帳を出して確認する。
「私は朝六時に起きて六時半には朝食……それは一緒ですね。朝食作りましょうか?」
お、と社長が意外そうな声をあげた。
「君のところは家政婦さんがいるんだろう。料理はできるの?」
「家政婦の飯田さんがお休みの日は夕飯も作りますから。ちなみに母が病気になってからずっと父と自分の朝食は私が作っています。簡単なものですけどね」
飯田さんには普段、私と父の昼食と夕食をお願いしていた。特に美味しかったのは飯田さんからレシピを教わって作っていた。
「社長が帰りが早い日は夕食を作っていいでしょうか?」
社長は少し驚いていた。
「家政婦を頼もうと思っていたんだ。君は真珠店の仕事があるじゃないか」
社長の部屋に引っ越すとこれまでなかった通勤をすることになる。通勤時間は地下鉄で二十分ほど。
「八時頃に夕食、なら何とか」
そう言うと、社長の顔には戸惑いが浮かんだ。
「……いいのか。君はなんていうか、しぶしぶこの結婚を承諾していたから、夕食や朝食を作ってもらえるなんて考えていなかった。しかも夕飯なんて八時間も立ち仕事してからだろう。君の身体が心配だ。無理はさせたくない」
社長の声のトーンは低く、真剣だった。本気で私のことを心配してくれてる。
私は声を改めて、社長に向き直った。
「そんな風に言っていただくのは嬉しいですが。社長にはこれから真珠店の立て直しをやってもらうでしょう。そんな方を少しでも労いたい、そういう気持ちがあります。それとも夕飯を待たれたりするのは重いでしょうか……」
実は一番気にしているのはここだった。「女房気どりで」とか思われないだろうかとそんな心配もある。
「重いなんて全く考えなくていいよ。正直、俺は夕食を作ってもらえるなんてラッキーだと思ってしまう。ただやはり君の負担が気になるから俺も作るよ。こう見えて町の中華料理店でバイトしてたんだ。君を喜ばせる自信がある」
へえ、と感心してしまった。
「御曹司なのに中華料理店ですか。なんだかそれも意外です」
バイトするにも、もっとお洒落なものを選びそうなのに。
「さっきちらっと俺はなりあがりだから、と言ったろう?俺は、父の愛人の息子なんだ。
しかもそれが分ったのは母が過労で亡くなってから二か月後でね。高校三年生だったから卒業したら働いて自分を食わせなきゃいけない。成績はよかったから税理士事務所で働くことが決まってた。通いながら税理士になる勉強をするつもりだったんだ」
私は頷いて聞いていた。
「そこに、ジュエリーブラッドの当時の社長が父親だから面倒を見る、と名乗り出てくれたんだ。父は随分俺を探してたらしい。あっと言う間に桐生家に迎えられて税理士の時の倍の給料でジュエリーブラッドで働くことになったんだ」
「そうだったんですか……」
思いがけない苦労話を聞かされてまじまじと社長を見る。こんな綺麗な顔立ちで服装がカジュアルでもきりっとしていて生粋の御曹司に見えるのに。
人って聞いてみないと分らない。
「桐生家にはお子さんがいらっしゃらなかったんですか?」
「いや、義兄がいた。だが大学卒業後、弁護士になって海外に行っている。義兄にジュエリーブラッドを継ぐ気はない、とはっきり言われて跡継ぎ問題を抱えていた頃に俺の存在が見つかったんだ。税理士志望がいきなり宝石屋をやれと言われてね、最初は随分戸惑ったが。宝石の世界も悪くないなと思うようになって、大学に通わせてもらった。それからがむしゃらに働いて今に至るよ」
はあ、と息をついてしまった。社長はさらりと言ったけれど、実は困難も多かったのではないだろうか。愛人の子、ということで嫌な思いはしなかったんだろうか。いや、したとしても。
「推測になりますが……きっと社長はいろんな困難を自分で乗り越えて今がある。だからすごく地に足がついているというか、大胆なこともできるんですね」
ははっ、と社長が破顔した。
「俺だって大口を開ける。お互いさまだ」
二人して黙々と大きく口を開けてバインミーを頬張る流れになった。こういう食べ物って一生懸命にならないと食べ終わらない気がする。美味しいけど大変。大変だけど美味しい。
半分ほど食べて、コーヒーを飲むとこちらも熱々で美味しかった。
「文香さん、口元」
え、と社長の方を向くと、ふっと唇の端を指で拭われた。
「ソースがついてた」
恥ずかしくなって思わずうつむいてしまう。
どうにかバインミーを食べ終えて、カップに残ったコーヒーを飲む。空はすこんと晴れていて、秋の陽ざしのおかげでぽかぽか感がある。
私はバレエ教室が終わると即、家に帰ってしまうので、こんなに外でのんびりしたのは久しぶりだ。
「どうかな屋外デートは。寒くない?」
社長も食べ終えてコーヒーのカップをもてあそんでいた。
「はい。陽ざしがあるので寒くないです。こんな風に公園に来ることもあまりないので、新鮮だなあって。社長はよく来られるんですか?」
「いや、そうでもないな。このバインミーのキッチンカーは、モールの駐車場に出ることもあるんだ。手短に食べたい時はちょうどいい」
モールというのは、ジュエリーブラッドが入っているショッピングモールの事だろう。
「社長は毎食、懐石料理やコース料理なのかと思ってました」
「そんなことないよ。もっと普通。夜中まで残業した時に食べるカップ麺はうまいな」
私は目を丸くした。
「意外でした。結構庶民的なんですね」
「まあ、俺はなりあがりだしな……そうだ、フリスビーをやらない?」
そう言って、社長は持っていたトートバッグからピンク色のフリスビーを取り出した。
三十分後。私と社長ははあはあ息を切らして、またこのキッチンカーのところまでやってきた。
フリスビーを投げる、キャッチできず走る、また投げる。キャッチ…の繰り返しで、大した運動になった。お互いバテて笑い合った。キッチンカーに確かアイスコーヒーがあった、と社長が言ってお互いカラカラに渇いた喉を潤すことにした。
ず、と音を立てて二人してアイスコーヒーを飲んだ。一気に飲んでやっと身体が落ち着いてきた。
「はは。思ったよりきつかった……君はあまり汗をかいていないようだけど」
「あ、普段バレエ教室に通ってるからかもしれません」
「バレエ?ほんとに?」
ぐっと社長に詰め寄られた。バレエの何がそうさせるんだろう。
「ええ。初めて3年になります」
そうなのか……と、社長は考え込んでしまった。宝石好きのお嬢様はバレエはしないんだろうか。お嬢様っぽいおけいこ事だと思うけど。
「それはいいことを聞いた。ちなみに休日はどんなことをして過ごす?」
私はちょっと考えてアイスコーヒーを飲むのをやめた。
「そうですね。バレエ教室の後は家に直帰で、自分の部屋で本を読んだりネット配信の映画を観たりするのが好きです。部屋の照明を少し暗くすると、すごく静かになった気がして落ち着きます」
ああ、と社長は頬を緩めた。
「わかるよ。海外出張の時、ホテルの部屋の照明が暗くて。なんだかしっくりくるんだよな。日本の通常の照明は人間にとって明るすぎるらしいから」
ふわっと秋の風が私たちの間を通り抜けた。気持ちのいい風だ。
「社長はアウトドア派なんですか?あまりおうちにいないみたいな」
社長はいいや、と首を振った。
「アウトドアでもなんでもないから、キャンプなんかは苦手な方だ。今日はどうして屋外かと言うと……君が男性とつきあった事がないと言うから」
え、と私は社長を見た。社長は公園の芝生を眺めてアイスコーヒーを飲んでいる。
「私が初デートだから、健全な公園デートにしてくれたんですか?」
実を言うと高校性みたいなデートだな、と思っていた。
「うん。まあ、そうだ」
これまでの社長のやり方が強引なものが多かったので、今日も社長に高級なデートで振り回されるんだろうと思っていた。でも全然ちがった。私の事を考えて、高校生カップルみたいなデートをしてくれたんだ。
それはとても意外で……とても嬉しいことだった。
「お気遣い、ありがとうございます。でも私、お酒を飲むのも好きです」
んっ、と社長が目を見開いた。
「いや、そんな子供扱いしたわけじゃない」
「そうですか?この後、女子の好きそうなパフェの店とか行こうと思ってませんでした?」
社長は私の目を覗き込んだ。
「どうしてわかるんだ……」
私は声を出して笑った。ベタすぎる。恋愛百戦錬磨の社長でもこんな事、あるんだ。
「君は、そうやって笑っている方が素敵だ」
目を細めて微笑む社長にそう言われて、心臓が跳ねた。この人はときどき私をどきりとさせる。それはすごく整った美麗な顔のせいだけじゃないと思うのだが。
社長はトートバッグから分厚いスケジュール帳を取り出した。
「お互いの毎日の行動パターンを確認しとこう。俺はほぼ公休はナシ。休みが取れた時は早めに君に言うよ。朝は五時に起きてランニングする。帰ってきてシャワーを浴びて六時半には朝食。八時まで新聞や読書をしてそれから出勤。帰りは不規則だ」
私は一週間後、社長の住む部屋で暮らすことが決まっている。私の部屋にはもう私用のベッドが置かれているそうだ。手早い。私も仕事から帰ったら荷物をまとめるのを繰り返すことになるだろう。
男性と一緒に暮らすのにドキドキしないと言ったら嘘になる。今日のこのデートと同じで対男性とのことになると、私は何でもかんでも初心者なのだ。果たして社長がお気に召すような毎日なるだろうか。
私も自分のスケジュール帳を出して確認する。
「私は朝六時に起きて六時半には朝食……それは一緒ですね。朝食作りましょうか?」
お、と社長が意外そうな声をあげた。
「君のところは家政婦さんがいるんだろう。料理はできるの?」
「家政婦の飯田さんがお休みの日は夕飯も作りますから。ちなみに母が病気になってからずっと父と自分の朝食は私が作っています。簡単なものですけどね」
飯田さんには普段、私と父の昼食と夕食をお願いしていた。特に美味しかったのは飯田さんからレシピを教わって作っていた。
「社長が帰りが早い日は夕食を作っていいでしょうか?」
社長は少し驚いていた。
「家政婦を頼もうと思っていたんだ。君は真珠店の仕事があるじゃないか」
社長の部屋に引っ越すとこれまでなかった通勤をすることになる。通勤時間は地下鉄で二十分ほど。
「八時頃に夕食、なら何とか」
そう言うと、社長の顔には戸惑いが浮かんだ。
「……いいのか。君はなんていうか、しぶしぶこの結婚を承諾していたから、夕食や朝食を作ってもらえるなんて考えていなかった。しかも夕飯なんて八時間も立ち仕事してからだろう。君の身体が心配だ。無理はさせたくない」
社長の声のトーンは低く、真剣だった。本気で私のことを心配してくれてる。
私は声を改めて、社長に向き直った。
「そんな風に言っていただくのは嬉しいですが。社長にはこれから真珠店の立て直しをやってもらうでしょう。そんな方を少しでも労いたい、そういう気持ちがあります。それとも夕飯を待たれたりするのは重いでしょうか……」
実は一番気にしているのはここだった。「女房気どりで」とか思われないだろうかとそんな心配もある。
「重いなんて全く考えなくていいよ。正直、俺は夕食を作ってもらえるなんてラッキーだと思ってしまう。ただやはり君の負担が気になるから俺も作るよ。こう見えて町の中華料理店でバイトしてたんだ。君を喜ばせる自信がある」
へえ、と感心してしまった。
「御曹司なのに中華料理店ですか。なんだかそれも意外です」
バイトするにも、もっとお洒落なものを選びそうなのに。
「さっきちらっと俺はなりあがりだから、と言ったろう?俺は、父の愛人の息子なんだ。
しかもそれが分ったのは母が過労で亡くなってから二か月後でね。高校三年生だったから卒業したら働いて自分を食わせなきゃいけない。成績はよかったから税理士事務所で働くことが決まってた。通いながら税理士になる勉強をするつもりだったんだ」
私は頷いて聞いていた。
「そこに、ジュエリーブラッドの当時の社長が父親だから面倒を見る、と名乗り出てくれたんだ。父は随分俺を探してたらしい。あっと言う間に桐生家に迎えられて税理士の時の倍の給料でジュエリーブラッドで働くことになったんだ」
「そうだったんですか……」
思いがけない苦労話を聞かされてまじまじと社長を見る。こんな綺麗な顔立ちで服装がカジュアルでもきりっとしていて生粋の御曹司に見えるのに。
人って聞いてみないと分らない。
「桐生家にはお子さんがいらっしゃらなかったんですか?」
「いや、義兄がいた。だが大学卒業後、弁護士になって海外に行っている。義兄にジュエリーブラッドを継ぐ気はない、とはっきり言われて跡継ぎ問題を抱えていた頃に俺の存在が見つかったんだ。税理士志望がいきなり宝石屋をやれと言われてね、最初は随分戸惑ったが。宝石の世界も悪くないなと思うようになって、大学に通わせてもらった。それからがむしゃらに働いて今に至るよ」
はあ、と息をついてしまった。社長はさらりと言ったけれど、実は困難も多かったのではないだろうか。愛人の子、ということで嫌な思いはしなかったんだろうか。いや、したとしても。
「推測になりますが……きっと社長はいろんな困難を自分で乗り越えて今がある。だからすごく地に足がついているというか、大胆なこともできるんですね」



