隣の年下くんがダンジョンの同居人でした。


 例えば映画館で、偶然隣同士に座った男女が恋人同士になることって、もはや天文学的な確率だと思う。
 それよりは隣に住まう住人と親しくなり恋人に発展する方があり得るはず。

 でも……、隣に住んでいる人が、まさかゲームの中で一緒に住む同居人であるなんて偶然は、おそらくとんでもない確率なんだろうって。

 ましてや彼と……あんな関係になるなんて。


「邪魔なので、下も脱いじゃいましょうか?」

 彼の低音で柔らかい響きを持つ声が、甘く耳の奥を揺らした。
 先ほどまで、執拗なほどに私の耳朶にキスを落としていたせいか、ほんの少し息が上がっているみたいだ。
 私は彼に気づかれないように、小さく肩を震わせる。先ほどから観察するように肌の上を滑ってゆくじっとりとした視線のせいで、太ももの張り出した内側の筋をなぞる彼の掌の感覚が、より研ぎ澄まされて感じる。 

「ゲームの中ではあんなに勇ましいのに、僕の前じゃまるで従順な子犬みたいですね。ほら、こんなにもあなたの中から溢れて止まらない」

 彼は楽しげな様子で呟きながら、指先を濡らしている。
 もう限界だった。彼のなすがままに、されたい。
 彼に身も心も奪われてしまいたい。
 その後の不安も心配も、一切合切を忘れて、今だけの快楽に溺れてしまえ。
 
 そんな純粋で子供じみた欲が支配する。

「もう欲しいんですか? やらしい人ですね」
  
 激しくなる指の動きにたまらずに喘ぐと、彼は意地の悪いセリフを吐く。

 ゲームの世界なら、レベ帯がちがう相手なら華麗に逃げ切れたはずだ。
 けれどリアルの世界はそうもいかない。
 厄介なことに私は彼のことを拒否できないのだから。

 だからと言って、彼は決して私に無理強いをしているわけじゃない。
 私の意思で彼を欲するように、仕向けられている。