響け!永遠のレガート

「みんな「フランチェスカ。フランチェスカ。フランチェスカ」ばっかり。このオペラならフランチェスカしかいないわけ?フランチェスカなんて、支配人に媚でも売ってるんでしょ?だから毎回主役を勝ち取れるんだわ。出来レースでね!」

女性はそう言うと背を向けて去って行く。他の役者たちから「勝手なことを言うな!」と非難の声が上がったが、彼女は一度も振り返ることはなかった。レオンハルトは歌手の一人に訊ねる。

「すみません。彼女は誰ですか?」

「エミリーです。エミリー・アイスバーク。フランチェスカと同期でよく主役争いをしているんです」

「あいつ、フランチェスカに嫉妬してるんですよ。ずっと主役に選ばれるのはフランチェスカだから。醜い嫉妬っす」

歌手たちは口々にエミリーを非難する言葉を発する。レオンハルトはエミリーが去って行った方向を見つめた。エミリーはフランチェスカにいい感情を抱いていない。

(しかし、エミリーさんがフランチェスカさんの引退を知れば喜ぶだろう。「辞めるな」と脅迫する理由はなさそうだ)