響け!永遠のレガート

セドリックは窓の外を見つめる。目の前に広がる海は凪いでおり、夕焼けに照らされて宝石を閉じ込めているかのように煌めいていた。そんな海を見つめる彼の頭には、先ほど起きた事件のことが頭にあった。

「先生」

セドリックはそのか細い声に振り返る。助手のハリエットだった。ハリエットは両手を強く握り締めている。その手は小刻みに震えていた。

「ハリエット。少し休んだ方がいい」

セドリックはそう言ったものの、ハリエットは首を横に振る。

「あんな酷いことができる人がこの船にはいるんです。こんなところでゆっくり休むなんてできません」

「なら、早く犯人を見つけないとね」

事件現場は最上階にある客室。大きな悲鳴と銃声が聞こえ、セドリックとハリエットを含む数人が駆け付けた。部屋には鍵がかかっており、ドアを蹴破って中に入った。すると、部屋のベッドで一人の女性が血を流して倒れていた。密室殺人である。

「まずは、怪しい人物を見なかったか聞き込みをしに行こう」