この命のすべてで、君を想いたい



文化祭当日。


校舎にはにぎやかな音楽と人の声が溢れていて、秋の陽射しが窓から柔らかく差し込む。


雫はクラスメイトと慌ただしく接客をこなしていた。


紅茶を運び、笑顔を見せ、また次の席へ。
接客は苦手だったが、任された事は精一杯やる。



そんな中、ふと入口の方を見ると、そこに空が立っていた。

制服の袖を軽くまくって、いつもの穏やかな笑顔。


「いらっしゃいませー……」


雫と目が合う。

空は手を軽く上げ、雫は思わず小さく会釈した。


彼は蓮太郎たちと一緒に席に座るが、
その視線は何度も雫の方に向く。



雫はお盆を持ちながら、心臓がくすぐったく跳ねるのを感じていた。



そんな見ないで……顔、赤いかも



空の席に紅茶を運ぶと、彼は小声で言った。


「すごい似合ってる、そのエプロン。雫っぽい」


『え、あ……ありがとう……』


蓮太郎達が空をはやしたてる。

空はそれ以上何も言わず、優しい笑みを浮かべただけだった。