外に出ると、夏の匂いが濃く漂っていた。
蝉の声、夕焼け、風に混ざる花の匂い。
全部が、これから始まる夏の合図みたいだった。

『ねぇ、空。』

「んー?」


『……ほんとに、会いに来てくれるの?』


「うん。だって、雫に会えない夏なんて、つまんないから。」


言葉は自然なのに、胸の奥に響く真っ直ぐさ。
私は何も言葉に出来ずただ小さく頷く。


『……うん』

その瞬間、空が柔らかく笑って、雫の髪をひと撫でする。


「じゃあ夏休み、ちゃんと会える約束」


『……うん……』



声は小さいけど、心の中では嬉しさが弾けていた。


言いたいことの半分も出せなかったけれど、空が全部分かってくれていることを感じて、胸が温かくなった。