背後から傘の影が差し伸べられた。

「……泣いてんの?」

振り返ると、見知らぬ少年が立っていた。
雨に濡れた髪、やさしい瞳。同じ高校の制服を着ている。


手には、青空の柄の明るい傘。


『……え?』

言葉が出ない。泣き止もうとしても、涙はまだ頬を伝う。

少年は笑うでもなく、ただ静かに傘を差し出した。




「雨、嫌いでしょ」

「今日はなんか寂しくなるよね」


彼の言葉が私には全部図星だった。
言葉を失っている私に、彼は少しだけ笑って傘を差し出す。


「これ、使って」

『でも……』

「いいよ。俺、もう帰るし」



そう言って傘を押しつけるように渡し、彼は走り去っていった。