昨日泣きながら空の腕の中にいたことを、
朝になって夢みたいに思った。


でも鏡の前で腫れた目を見ると、あれが現実だったんだと改めて感じる。



憂鬱な顔で登校すると、教室のざわめきの中、ふと廊下の向こうに空の姿が見えた。
別のクラスなのに、どうしてかすぐに気づく。


目が合った瞬間、空は小さく手を振った。
その笑顔だけで、胸の奥がぎゅっとなる。

昼休み、廊下ですれ違いざまに空が声をかけた。


「昨日のこと、もう大丈夫?」


『……うん、平気』


空はその一言で安心したみたいに笑い、私は胸の奥がじんわり温かくなるのを感じる。