この命のすべてで、君を想いたい

雫の手は、もう動かない。



でも、俺の手のひらには確かに“さっきまでいた温度”が残っていた。



涙で視界が滲むのに、

雫の顔だけはどうしても綺麗に見えた。




まるで、長い旅の疲れをやっと降ろしたような、

穏やかで、静かで、


こんなにも苦しんだ人とは思えないほど柔らかな表情だった。




俺はそっと、その頬に触れた。


冷たくなっていくのに、
なぜか心の奥はあたたかかった。



雫が最後に見た景色が、


俺たちでよかった。
そう思えるだけで、胸の痛みは涙に変わってこぼれ続けた。



この先、雫はもう言葉をくれないし、

笑ってくれないし、

呼べば「なに?」って振り向きもしない。



それなのに――
雫が消えたなんて、どうしても思えなかった。