雫の手を握ったまま、
その細い指が、ほんのわずかに力を返してきた。
その小さな動きが、
“最後の想いを伝えようとしてくれている”ってことを
俺に気づかせた。
雫はゆっくり、静かに――
痛みからゆっくり解放されるみたいに、まぶたを閉じた。
その顔は、不思議なくらい穏やかで、柔らかくて。
まるで「大丈夫だよ、空」って言ってくれてるみたいだった。
雫は、どれだけ辛かったんだろう。
どれだけ苦しい夜をひとりで耐えてきたんだろう。
泣きたいのに泣けなかった日も、
誰にも言えない傷のまま眠った日も、
きっとたくさんあった。
“幸せなんて自分には遠い”って思い込んで、
それでも朝を迎えて――
それでも、歩き続けてくれた。
そこに俺たちがいた。
そこまで来てくれたんだ。
空っぽになるまで愛をくれて、
俺たちの愛も、まるごと受け取ってくれて。
