この命のすべてで、君を想いたい


それなのに空も、
強く握り返すことはしなかった。

わたしに合わせるみたいに、
触れた分だけ、そっと触れただけ。

“無理に生かそう”とする触れ方じゃなくて、
“最期まで見届ける”ための触れ方。

その優しさが、胸に刺さった。

呼吸が苦しくなると、
空がその変化に気づいて、
背中に手を添える。

さすろうともしない。
ただ、そっと支えるだけ。

支えているというより、
私の体が崩れてしまわないように
受け止めているみたいだった。

目の前の光が、少し滲む。

泣いているわけじゃない。
体が、もううまく働かなくなっているだけ。

空が小さく息を呑む気配がして、
わたしの頬にかかる髪をそっとどけた。

その仕草すら、胸を締めつける。

こんなふうに触れてもらえるの、
あと何回なんだろう。


呼吸がうまくできない。
肺が、空気を拒むみたいに固く縮んでいく。

それでも、
わたしは空の指先を探した。

触れていたくて。
最後まで、触れていたくて。

空は迷わずその手を包んでくれた。

握り返す力はない。
ただ、触れているだけ。

それでも――

その触れ合いが、
最後の命の灯みたいに温かかった。

朝は残酷なくらい静かで、
わたしの鼓動の弱まりまで鮮明に感じられた。

空もきっと気づいてる。

“今日かもしれない”

そんな予感が、
二人の間に薄く落ちていた。

それでも、空は離れなかった。

まるで、
世界の終わりにそっと触れているみたいに――。