この命のすべてで、君を想いたい

空はそっと雫の髪を撫で、呼吸のリズムに合わせて手を添える。


全身の力が抜けていくのを感じながらも、
雫の温もりを、手のひらで、心で、記憶に刻む。



「……空」

かすかな声が耳元で響く。


振り返らずとも、その声の震えと温度で、空は雫の気持ちを知る。


泣きたいのか、ただ呼んだだけなのか、もう区別はつかない。



『ここにいるよ。ずっと』

返事にならない返事を返し、空はゆっくりと肩を寄せた。




その小さなぬくもりで、雫の存在を全身で感じる。



この瞬間が永遠に続けばいい——
胸の奥で強く願いながらも、現実を知っている。



呼吸はさらに浅くなり、雫の手の力も弱まる。



それでも、空の手に触れることができるうちは、まだこの世界にいるということを伝えられる。




『……雫、安心して。ずっと一緒だよ』




『大好きだよ、ほんとにずっとね』


声が震え、言葉が途切れるけれど、
その言葉のすべてが、雫に届くように祈った。



夕方の光がゆっくりと部屋を染め、
二人だけの時間が静かに、愛おしく、そして儚く流れていた。