この命のすべてで、君を想いたい

医師は深く頭を下げた。




「辛い選択を……ありがとうございます。
青葉さんの判断は、雫さんにとって一番穏やかな形になります。」



わかっている。
わかってるのに、胸はずっと痛い。



『……少しだけ時間をください。
 雫のそばに戻る前に……落ち着かせたいので』



そう言うと、医師は邪魔しないように
そっと離れていった。


廊下にひとり残される。



朝の光が白くて、その白さが残酷で、
涙が込み上げるのを必死で押しとどめる。



泣いている時間はない。
雫は、ひとりで弱い呼吸をして待っている。




空は胸に手を当て、
ゆっくり息を整えた。



——戻らなきゃ。



震える足を前に出す。
ノブに触れる手が汗ばむ。




病室のドアをそっと開けると、
ベッドの上で眠る雫の胸が、
かすかに上下していた。



空は、まるで崩れ落ちるみたいに、
雫の手をそっと握り直す。



『……ただいま、雫』


声が震えても、
雫の指が弱く動いてくれたその瞬間、


それだけで、生きていけるほど泣きたくなった。