この命のすべてで、君を想いたい

医師は続けた。




「……今日が、おそらく山場になるでしょう。」




その言葉の重さが、
体の中心にずしんと落ちる。




今日――。

今日が、雫の最期かもしれない。





頭では理解しているのに、
心が、全力で拒んだ。




「それで……」
医師は少しだけ間を置き、
苦しそうに言葉を選んだ。



「延命処置について、お考えを伺いたいんです。」




延命。




その言葉が空気を変えた。



白い廊下の光が、急に冷たくなる。
背中が汗ばむ。
指先が震える。





「例えば、心臓が止まりかけたときの蘇生や、呼吸が維持できなくなった場合の人工呼吸器の装着など……」




医師の声が遠く、
まるで水の底から聞いているみたいだった。




延命――“生かすための治療”じゃない。
“苦しみを伸ばす治療”だ。




雫が前に、
「苦しいのはもういやだよ、空」と、小さな声で呟いていたのを思い出す。



あの声が、
いま耳元でよみがえる。



胸が締め付けられて、
息が吸えなくなった。