この命のすべてで、君を想いたい

『ねぇ、空。あの日からずっと思ってるの。わたし、こんなに愛される人生でよかったなって』




あの海辺で会った時、私の運命が変わったんだよ。



幸せになっちゃいけない人間だと
私は思い込んでたのに、
違った。





幸せになれた。
誰かを幸せにできた。


私は、生きててよかったよ...



空の喉がまた詰まる。



言葉にしたら、崩れてしまいそうで。

雫は穏やかな声のまま、さらに言葉を重ねる。





『空は気づいてないかもだけど……
わたしのこと、すごく大事にしてくれてた。“好き”とか“愛してる”より、ずっと深い場所で』




風が吹くたび、雫の肩が細かく震える。



でもその震えの中に、しっかりした想いがあった。




『あんなにひどい別れ方したのに、今まだ一緒にいてくれる』



空は横顔を見つめたまま、言葉を継ぐ。




「当然だよ。雫は俺の……一番大切な人だよ」



雫はゆっくり息を吐いて、小さな声で続けた。



『空ってね……
いつもわたしの「ないこと」を責めないで、「できるように手伝ってくれる」人だったんだよ。そういうところ、ほんとに……大好きだった』



“だった”という過去形がまた胸を刺す。
でもたぶん雫は、意図してない。



『空といると、わたし、いつも安心だった。ちょっとしたこと全部覚えててくれるし、何も言わなくても助けてくれるし……そんな人、空しかいないよ』




そこで、雫はほんの少し笑った。



『ねぇ、わたしね……
自分の人生全部、空に守られてきたんだなって思うの』


あまりに静かで、あまりに優しすぎる言葉だった。