この命のすべてで、君を想いたい

「……おはよう。」



小さな声だった。


昨夜、わたしがほとんど眠らず空の匂いや温度を噛み締めていたことを、
全部わかってるみたいな声。


わたしも同じ言葉を返そうとしたけれど、喉の奥で詰まってしまう。



それでもなんとか笑って見せたら、空はほんの少しだけ目を細めた。


朝の光が強くなる。


まっすぐな光。




わたしはゆっくり体を離そうとしたけれど、


空の指がそっとわたしの手をつかんだ。




握るでもなく、


引き止めるでもなく、


ただ触れて、


そこにいることだけを伝えるように。






もう昨夜みたいに長く抱きしめ合う体力はない。




だけど、触れられる。
まだ触れられる。




それだけで、じゅうぶん胸が痛むほど愛おしかった。





わたしは空の手を返し、指を重ねた。




朝の匂いの中で、静かに、二人の時間だけが流れていく。





終わりが近づくほど、
一秒が、ずっと重く、ずっと深くなる――そんな夜明けだった。