雫の弱くなる呼吸と、

落ちていく体温と、

握る力が少しずつ消えていく感覚。




全部が怖かった。
全部が愛しかった。

雫は声にならない声で何度もつぶやいていた。
言葉にならない願いが、胸に響く。



その全部が、雫の体の震えと一緒に伝わってきた。



今夜は、雫が俺を抱きしめられる最後の夜だ。




命はまだ続くかもしれない。



けど二人で同じ布団に入って眠る夜はもう来ない。





だから俺は、



雫の呼吸も、

鼓動も、

温度も、


手が覚えてしまうほどしっかり抱きしめた。




雫は俺の腕の中で小さく息をしていた。

その姿が、


静かで、切なくて、


あまりにも愛しくて、




生きていることのすべてが輝いて見えた。





この夜が終わらなければいい。

そう、心の底から願っていた。