この命のすべてで、君を想いたい

玄関の扉を閉めると、いつもの静けさが戻った。


雨の音だけが、遠くでまだ続いている。


この家には、もう誰もいない。
その事実を意識すると、胸の奥がひんやりと冷えた。


でも、隣に空が立っているだけで、空気が違って感じる。



『ここ、タオルあるから』
私は洗面所へ向かい、新しい白いタオルを差し出すと、空は少し戸惑いながら受ける。

「ありがとう」
その声がやけに静かで、優しかった。




濡れた髪を拭く空を見つめながら、
私は言葉が出ず、ただ見守るしか無かった。


リビングの明かりをつけると、
空間がやけに広く見える。


家具はあるのに、音も匂いも、人の気配がしない。


空はそんな部屋を見回して、何も聞かずに黙っていた。
その沈黙が、私にはありがたかった。




『静かすぎて、ちょっと落ち着かないね』
笑ってみたけれど、声が震えていた。



一瞬、目が合う。
その視線の中に、言葉にできないものが流れた気がした。


優しさとか、寂しさとか、どちらとも言えないもの。