この命のすべてで、君を想いたい

『……空に...触れていられるうちに...
 たくさん...触っておきたいの』



言葉が途切れ途切れになる。
話すと息がきれる。



「触れてていいよ。ずっと。
 まだ話せるし……まだここだよ、雫」





空はそっと目をつぶっていた。
何かをかみ締めているようだった。






私の呼吸を、


手の震えを、


体の重さを、


全部確かめてるみたいに。


私はそれをじっと見つめていた。

涙を流すことさえも惜しく感じた。





“消えていく準備をしてる体”と、
“まだ終わらせないように抱きしめてくる腕”。


その矛盾が、
苦しいほど優しい。



私は空の胸に顔を埋めたまま、


声にならない声で何度も何度もつぶやいた。




――もう少しだけ


――この時間が終わらなければいいのに


――明日もこうしていたい


――明日が来なくてもいいから



今日は空のことを抱きしめられる最後の夜だった。


命はまだ続くのに、
もうこんなふうには触れ合えない夜。



だから、
痛いほどこの瞬間を刻みつけた。


空の体温を、
呼吸を、
胸の鼓動を――

全部、最後の力で抱きしめ続けた。




その夜は、


静かで、切なくて、

誰よりも愛しくて、

生きていることすべてが輝いて見えた。