この命のすべてで、君を想いたい

歩くたびに、彼の左肩が傘の外に出ているのが見える。


私を濡らさないように、傘を傾けてくれている。
気づけば、空の左肩はびしょびしょになっていた。


『……空、濡れてるよ 』


「これくらい大丈夫だよ」


彼はいつものように、穏やかに笑う。

その笑顔が、雨の中でも不思議と温かくて、胸の奥がきゅっとなる。




家の前まで来ると、思わず言った。

『タオル、貸すね。風邪ひいちゃう』


「いいよ、もう帰るだけだから」
少し困ったように笑う空。


でも、私は首を横に振った。
『……大丈夫。誰もいないから。』



その瞬間、空気が少し変わった。


自分で放った言葉が
胸に冷たい膜を張っていくように感じる。


静かな雨の音の中で、
傘の先から落ちる水滴だけが、ぽたぽたと音を立てている。



玄関の鍵を回しながら、小さく笑った。


『入って』


「じゃあ、お邪魔します」


空は少し戸惑いながらも、傘を閉じて私の後を追った。