病室の扉を開けた瞬間、空気が変わった。



毎日来ていたけれど、今日は特に調子が悪そう。





窓から差し込む光は優しいのに、



その中で眠る雫の姿は、胸がぎゅっと痛くなるほど弱々しかった。




顔は少し痩せて、まつげが影を落としていて、


呼吸は浅くて、胸が上下するたびに苦しそうで。




ベッドの隣には空が座っていて、
手をそっと握ったまま、雫の顔を見つめていた。




『雫……来たよ』




小さく声をかけると、雫のまぶたが、ゆっくりと揺れた。





「……さつき……? みんな……も……?」




その声は、細くて、寝起きの子みたいに弱々しくて。



沙月は笑顔を作ろうとしたけれど、胸の奥がずきんと痛む。




「来たよー!ほら、オレらも!」
蓮太郎が、あえて明るく声を上げた。




「よっ、雫。寝起き感すごいけど、可愛いから許す」


裕大が軽口を叩いて、沙月を助けるみたいに空気を軽くしてくれる。




雫はそれを聞いて、小さく笑った。





――その笑顔だけで、涙が出そうになる。