この命のすべてで、君を想いたい

病室のドアが開いてトイレへ行っていた空が戻ってきた。



「雫……?」



私の手元の薬を見るだけで、状況を察したらしい。


すぐそばまで来て、顔色を覗き込む。



「今日、しんどいの?」




問いかけは優しいのに、その奥に焦りが滲んでいた。
胸の奥に触れられたみたいで、少し苦しい。



私は、また笑ったふりをする。






『……大丈夫だよ。ただ、ちょっと痛いだけ』





「少しの顔じゃないよ」





そう言って、空はそっと私の手を包む。





その手はあったかくて、



触れられた瞬間、こらえていたものが溶けていきそうになる。



レスキュー薬は効いてくれるけど、持続はしない。




痛みは波のように繰り返して、体力を少しずつ削っていった。




空は黙って私の呼吸を聞いていたが、



やがて決意したように口を開いた。





「……貼る痛み止め、増やしてもらおう。主治医の先生に相談してみよう」




『…やだ』




即答だった。




空が驚いたように目を瞬かせる。




『眠くなるから……起きてる時間、減っちゃうもん』




痛みがあれば、薬。



薬を増やせば、眠気。



眠れば、空と過ごす時間が減る。





私の時間は、きっと空より早く減っていく。



だから、眠っている間に一日が終わるのが怖かった。





『せっかく空が来てくれるのに……寝ちゃったら嫌だよ……』





声は掠れていて、子どもみたいだった。