この命のすべてで、君を想いたい

街灯の光が雨に滲んで、
二人の影を柔らかく重ねている。


傘の中だけ、世界が少し違って見える。
まるで時間から切り取られた小さな世界のようだった。


『……ねぇ、空』

「ん?」

『ありがと。今日、来てくれて』

私の心からどんどん言葉が溢れてくる。



「俺こそ。雫が笑ってくれると、なんか救われる」



そう言って、空は少しだけ傘を傾けた。



肩にあたる雨粒の冷たさよりも、その言葉の温かさがずっと強く感じられた。



雨は、まだ止む気配はない。
それでも二人は、並んで海沿いの道を歩く。


波の音が遠くで静かに響いて、
潮の香りと雨の匂いが混ざり合い、どこか懐かしい気持ちになる。



空と出会ってから、
あの日のことを、私はずっと気にしていた。



でも空は何も聞いてこない。
まるで最初から、すべてをわかっているように。


その沈黙が、逆に優しくて、心が少しだけ軽くなる。