空はすぐには返事をしなかった。
ただ、横で静かに息を飲んだのが分かった。
やがて、夕日よりあたたかい声が返ってきた。
「……うん。
雫がそう思ってくれるなら……俺はそれで十分だよ」
それだけで涙がこぼれそうになった。
空は続けた。
「雫を、ちゃんと支えたい。無理してるのも、怖がってるのも……俺、全部わかってるよ」
そう言って、そっと私の手を包み込む。
その手の温度が、胸の奥まで沁みていく。
そこで空はようやく私を見る。
その目には、夕日よりずっと強い色が宿っていた。
「……だから俺も、ちゃんと前向きたい。
一緒に、生きてくれる時間を、大事にしたい」
彼の言葉は震えていなかった。
でも、握る手の力がほんの少しだけ強くなる。
私はその熱をぎゅっと握り返した。
『大丈夫。空がいてくれるだけで、前向けるよ』
本当にそう思った。
怖いものはまだそこにあるのに、
空の手に触れているだけで、心は確かに軽くなる。
すると空は、少し照れたように笑った。
「……ありがと。雫にそう言われると、俺も強くなれる」
その笑顔が少しだけ滲んで見えて、
私は目元をそっと指で押さえた。
空はそれに気づいて、何も言わず、ただそっと肩を寄せる。
風が少し強く吹いた。
けれど私たちの距離は、もう少しも揺れなかった。
「大丈夫。どんな日でも、一緒に歩くよ」
空のその言葉は、夕日より柔らかく、夜より静かで、
そして今の私には、何より心強かった。
