この命のすべてで、君を想いたい

「緩和ケアって……痛みとか苦しさをできるだけ取って、穏やかに過ごせる場所なんだって」



一語ずつ確かめるみたいに。



「面会時間とかの制限も、ほとんどなくてさ…誰かと過ごしたいって思ったときに、ちゃんと一緒にいられる場所で」





「泊まることもできるんだって。雫が……ひとりになる時間が少なくて済むようにって」




雫の心に、柔らかいものと寂しいものが同時に満ちる。



私はこんなに辛い話を空に一人で聞かせてしまったのか...





何も言えなくて、
また少しの沈黙が続いた。




風が二人の間を通り抜けて、
その匂いが少し胸を締めつけた。




空は、また沈みきらない声で続ける。





「医師が……言ってた。“ここからは、時間を大切にすることがいちばんの治療です”って」



「今だって十分大事にしてるのにな」





空は優しく笑った。


その笑顔が愛おしくて、何も言いたくなかった。

このまま時間が止まって欲しかった。




でもそんなことは起こらない。



夕日の色が濃くなる。
空の横顔も、その光の中で滲んで見えた。




雫はゆっくり、空の手を握った。




『そっか……うん。
 空、話してくれてありがとう』




その言葉を聞いた瞬間、
空は小さく目を閉じて、肩を震わせそうになって、でもすぐに笑おうとした。