空が部屋を出てから私は必死に心を落ち着かせようとしていた。





きっといい報告ではない。
ものすごく悪い話かもしれない。




でももう暗い顔は出来ない。
空が代わりに行ってくれたから。






私ができるのは、何でもないような風に振る舞うことだけ。






ドアが静かに開いて、空が戻ってきた。



いつもの空だ。


そう思いたいのに、最初の一歩、目線の揺れ、呼吸の浅さ――


小さな“違和感”が胸に刺さる。






『おかえり』






声をかけると、空は微笑んだ。





ちゃんと笑ってるのに、どこかぎこちない。





目の奥だけが、少しだけ遠い。








ほんの数秒の沈黙が苦しくて、雫はぎゅっと息を吸った。