最近、自分の体がどう変わっていってるのか、ぼんやりとわかるようになってきた。




前より息がしづらい。


体を起こすだけで、胸の奥がぎゅっと掴まれるみたいに痛む。


誰かの話を聞いていたはずなのに、気づいたら眠ってしまっていることが増えた。




たぶん、もうあまり長くないんだろうなって思う。




でも――



病室に空が入ってくる音だけは、眠りの底に沈んでいる時でさえ、不思議とわかる。



足音、声、息の仕方。


全部が、心の奥の柔らかいところにすっと触れてくる。





「今日さ、またあの店の前通って……」


空の声。



優しくて、少しだけ笑ってて、
でもその奥にあるものには、私も気づいている。




空は私の前で泣かない。


弱音を吐かない。


私に心配させたくないから、全部、飲み込んでる。





だから、眠りに落ちる直前、
私はいつも思う。





――あぁ、今日も来てくれたんだ。




空がそばにいるだけで、


痛みは消えないけど、怖さは薄れていく。