この命のすべてで、君を想いたい

病室の朝は、夜と違う静けさをまとっていた。




白いカーテン越しに差し込む薄い光が、

まだ眠っている雫の頬をかすかに照らしている。

空は、その横の椅子にもう座っていた。



昨日の雫の様子を考えるといても立ってもいられない気持ちになっていた。




ふと、雫の寝息が安定しているのを見て、空は小さく息をつく。




……よかった、眠れてる




空は雫に触れないよう、そっと毛布の端を整える。



顔色はやっぱりよくない。


けれど、雫は昨日より少しだけ安らかな顔をしていた。




空は椅子に腰を下ろし、雫の手元に目を落とす。




細くなった指。



昨日、涙で震えた手。



それでも空の手をぎゅっと握り返してくれた、あの温度。




胸が痛む。

でも今日はちゃんと、笑おう

静かに、そう心の中で思った。








小さく布が動いた。



雫のまつげが震え、ゆっくりと目が開く。



ぼんやりと天井を見上げ、それから空の方へ視線を向ける。




その瞬間――
雫の表情が、少し驚いて、少し嬉しそうに柔らかくゆるんだ。



「……空……?もう来てたの……?」


声は弱いけれど、夜の涙の痕はほとんど残っていない。



空は笑った。



雫が安心できるように、いつも通りの、あの優しい笑顔で。




『おはよう。ほら、昨日言ったじゃん。明日も来るって。…ちょっとフライングしたけど』

雫はふっと笑った。

まだ寝起きの、かすかな微笑み。




「早すぎるよ……空。
そんなに……私の顔、見たかったの?」




空は肩をすくめて、少しだけおちゃらけた調子で返す。




『まぁね。雫の寝顔チェックしにきた』



「もぉ……」



雫は恥ずかしそうに目をそらしたけど、口元はほんの少し幸せそうにほころんでいた。