どれだけ時間が経ったのだろうか。
消灯時間は過ぎていて、病室の明かりは、もうスタンドライトだけだった。
点滴の規則的な音と、夜特有の静けさが、やけに胸に刺さる。
雫は空の手を握ったまま、眠りにつこうとしていた。
薬のせいでまぶたは重く、呼吸も少しずつ深くなる。
『空、今日はありがとね』
か細い声は、もう夢と現実の境目にあって、
聞き返したら消えてしまいそうだった。
空は笑った。
優しい、いつもの、雫が安心できる笑顔。
「おやすみ。また明日来るからね」
その声があまりにも優しくて、
雫の胸はぎゅっと痛んだ。
ほんとうは――
握っている手を離したくない。
明日も明後日も、その先も全部一緒にいたい。
けれど、それを言ってしまえば、
空はきっと空自身を捨ててしまう。
未来を全部、雫にくれてしまう。
だから雫は言わない。
言えない。
息を押し殺すようにして、
小さな声で「おやすみ」と返すだけにした。
消灯時間は過ぎていて、病室の明かりは、もうスタンドライトだけだった。
点滴の規則的な音と、夜特有の静けさが、やけに胸に刺さる。
雫は空の手を握ったまま、眠りにつこうとしていた。
薬のせいでまぶたは重く、呼吸も少しずつ深くなる。
『空、今日はありがとね』
か細い声は、もう夢と現実の境目にあって、
聞き返したら消えてしまいそうだった。
空は笑った。
優しい、いつもの、雫が安心できる笑顔。
「おやすみ。また明日来るからね」
その声があまりにも優しくて、
雫の胸はぎゅっと痛んだ。
ほんとうは――
握っている手を離したくない。
明日も明後日も、その先も全部一緒にいたい。
けれど、それを言ってしまえば、
空はきっと空自身を捨ててしまう。
未来を全部、雫にくれてしまう。
だから雫は言わない。
言えない。
息を押し殺すようにして、
小さな声で「おやすみ」と返すだけにした。
