「言っていいよ」




空の声は震えていた。
でも強かった。



「願っていい。甘えていい。弱音吐いていい。俺のこと頼っていいんだよ、雫」




「俺はそれしかできないんだよ、ごめん、ごめん雫......」






空の声がもっともっと切なく震える。
空は雫の頭を優しく撫でる。



雫の喉からは、押し殺したような声が漏れる。



『……空、空の未来を奪いたくないよ』



『でも本当は……もっと一緒にいたい……もっと、もっと……空と大人になりたかった……』




『大学生になって……結婚して……子供だって欲しかった……ずっと隣に……いたかった』





そう未来を語り合ったあの日に戻れたら、
どれだけ幸せだろう。




でももう、戻れない。
私たちは最期に向かっていくしかない。



 
堪えていたものが、ついに溢れた。





涙じゃなく、言葉が。

声が割れて、喉が震えて、それでも止まらない。




空に言っても、どうにもならない。
もっと空を傷つけるだけかもしれない。


それでも、止められなかった。



深すぎる絶望と悲しみが雫の心を覆っていた。