扉がそっと開いた。





「雫?」


空だった。




息が少し乱れて、走ってきたのがすぐにわかった。



「なんか泣いてるかもって思ったから」



なんで、分かるんだろう。



「勘違いだったらいいけど...」


雫は顔を上げられなかった。
見たら、崩れてしまいそうだった。




空は何も言わず、ベッドの横に座り、
そっと雫の頭を胸に引き寄せた。





ゆっくり、ゆっくり、背中を撫でる。




『……ごめん……』
やっと出た雫の声は痛いくらいに震えていた。


「なんで謝るの?大丈夫だよ、大丈夫」
空の声は穏やかで、柔らかくて、少しだけ掠れていた。




『空に...申し訳ない...』



「なにも...申し訳ないことなんて一つもないよ」




『……私……空の未来、全部……ぐちゃぐちゃにしてる……』





「そんなことない、毎日すっごく幸せだよ。」





『私のせいで……空……きっと……もっと幸せになれたのに……』




言葉にした瞬間、胃の奥がぎゅっとひきつった。涙じゃなく、痛みで嗚咽が漏れる。