雫の胸は、静かにヒビが入ったように痛む。






空が去ったあとの部屋は、急に広くなる。




シーツのこすれる音、

点滴の滴る音、

呼吸の音。


その全てが重くのしかかる。




空の前で泣いちゃだめ…
絶対にだめ…


そう思えば思うほど、辛く、苦しくなる。

1人になると、涙が出てしまう。


声を殺して、肩を震わせて泣くしかない。

死にたくない……
空と離れたくない……



願うほど、苦しくなる。

雫は自分の胸を押さえながら震え続ける。




病室の明かりは柔らかく、外の明かりが静かに灯る。


雫はベッドに座ったまま、手を握りしめる。




指先に力を入れても、胸の奥に渦巻く不安と恐怖は抑えきれなかった。







── 静かすぎる夜。
病室の時計の針が、やけに大きく響いていた。



雫はベッドの上で膝を抱えていた。



目は開いているのに、涙は出ない。



泣きたくても、涙が出るほどの力すら残っていない。




「…………」


喉が張りついたみたいに声が出ない。
胸の奥が、ぎゅうっと潰されたみたいに痛い。




── 生きたい。


── 怖い。


── でも……もう長くない。




それを突きつけられた恐怖が、何度も波のように胸を殴ってくる。