冬の午後の光が差し込む病室。


消毒液とカーテンの洗剤の匂いが、ゆっくりと空気に溶けている。



扉が開いて、空の足音が近づいてくるたび──



雫の心はいつも、ほんの一秒だけ動きを止める。




来てくれた…

ただそれだけで胸が温かくなる。


涙が出そうになるほど嬉しい。



空の存在は、もう“生きていたい理由”そのものになっている。




でも同時に、それが酷く痛い。





“私はこの人の隣にもう長くいられないんだ”





その真実が、笑顔を作るたび胸に刺さる。