エレベーターが開くと、ふわっと風が頬を撫でた。
季節の匂いがして、胸が少しだけ熱くなる。


手すりに寄りかかって空と並ぶ。



『あ……風、気持ちいい……』



「雫、顔赤いよ。寒くない?」



『平気……空が隣にいるから』



「それ関係ある?」



『あるよ』




そう言った瞬間、空が少し笑って、手すり越しに私の頭をぽんと撫でた。




ずるい。
こういうとこ、ほんとに好き。




「ほら、あそこ。校庭みたいなの見える」



『……あ、ほんとだ。懐かしいね』




「よく2人でサボってさ、ああいうとこで寝転んでたよな」



『え、それ空だけでしょ。私はサボらされただけ』




「いや、あれは雫が俺のこと好きだから……」



『ちがう!』




「はいはい」




空が機嫌よく笑っていると、


まるで病気のことなんて全部嘘みたいで、胸が温かくなる。