『お前だって、雫と別れたことまだ引きずってるくせに……それ隠してんだろ』


空の表情が一瞬変わる。
「雫は今関係ないだろ」

その瞬間、裕大の声に怒りが混じる。


『関係ないわけあるかよ、雫は一人で、辛い思いをしてる、お前だけ忘れたなんてそんなのいいわけない』

教室の空気が張りつめる。
沙月と蓮太郎が互いに顔を見合わせ、口をぽかんと開ける。

「え……なんで裕大、雫?知ってるの?」

「ちょっと待って、何の話?」


空は眉を寄せ、言葉を探す。


だが、裕大の視線は揺らがない。

「黙れよ、好きなやつが出来たって言われたんだから仕方ないだろ。」

空は引きずる心を押さえながらなんとか言葉を紡ぎ出す。


『そもそもそれだけで別れたのが間違いだったよ、お前は。』


じりじりと怒りを持って空に詰め寄る裕大を、沙月と蓮太郎が必死に止める。


「ねえ、急に怒り出してどうしちゃったの?裕大らしくないよ」

と沙月が慌てたように言う。