雫がわずかに体を起こすと、
裕大はさりげなく手を添える。

その温もりに、雫は小さく肩を緩める。


裕大は無理に何かを強要せず、ただ傍にいることで支えようと決めていた。



陽が沈む頃、
二人は窓際に並んで座る。


雫は静かに目を閉じ、裕大は景色を眺める。


言葉はなくても、互いに存在を感じ合える時間。





二人の一番ましな約束から数日が過ぎた。


雫は相変わらずベッドの中で静かに過ごしている。


ご飯もほとんど手をつけず、体力はまだ戻らない。

裕大は今日もベッドの端に座り、
そっと雫の手元に目を落とす。


何も言わず、ただそばにいるだけ。



雫はその存在を必要としていることを、言葉にせずとも感じていた。



「今日は無理に食べなくていいよ」

裕大が口にしたのは、決して強制ではなく、雫を責めないやさしい一言。


雫は小さくうなずくと、
布団に顔を埋め、目を閉じる。


数日が経っても、特別な変化はない。



でも、日常のように穏やかに過ぎていく時間が、
二人にとって最も安らぐひとときだった。


裕大は空やみんなのことを口にせず、雫も特に質問はしない。


二人だけの静かな時間が、
どれだけ貴重で心を落ち着かせるものかを、

お互いが知っていたからだ。