この命のすべてで、君を想いたい

病院をでる直前、売店の前を通りかかると、

カウンターの向こうでお礼を伝える小さな声が聞こえた。




ふと目を上げると、レジ横に見覚えのある姿があった。


髪の艶、しなやかな仕草、どこか静かな雰囲気……。



「……雫?」



その一言で、全身が一気に震えた。

この目線の先に、間違いなく雫がいる。



目が合った瞬間、言葉は出ず、ただ互いに立ち尽くす。



絶望の先に、思いがけない再会の温度が差し込む。





『……雫?』


声は震えていたが、口からは2度目の呼びかけが自然と出てしまった。



雫は一瞬目を見開き、
慌てたように後ろを向く。



「……あ、あの、帰ってください!」



小さな声で、しかしはっきりそう告げた。
その声に裕大は胸が痛む。


『雫……』
何度呼んでも、雫は振り返ろうとしない。


雫の息は荒く、肩が上下に静かに動いている。


『……大丈夫?無理しないで』


そう言いながら、裕大はそっと雫に近づき手を伸ばす。



雫の肩に触れた瞬間、かすかに震える体を感じた。


「……いや、帰ってください!」



雫は必死に振り切ろうとするが、力がほとんど残っていない。



裕大は一瞬ショックを受けるが、決して無理強いはせず、そっと体を支えながら歩く。


『病室まで1人で行かせられないよ。俺がそこまで支えるから』


優しく声をかけるその声に、雫は息を詰める。

廊下を進み、病室の前に着く。