裕大サイド

雫が学校に来なくなって数日。
放課後の教室には、微妙な空気が漂っていた。

空も、蓮太郎も、沙月も、

それぞれ平気なふりをしているけれど、

どこか気持ちが切り替えられていないのが分かる。



重い沈黙のあと、裕大がぽつりと言った。

「……雫、なんで来ねぇんだろな」


空は教科書を閉じながら、
表情を動かさずに短く答えた。

「さあ」

声は淡々としていた。
でも、指先が僅かに震えているのを裕大は見逃さなかった。


蓮太郎も同じように静かで、
沙月だけが心配そうに唇を噛んでいる。


みんな、気にしてる。
でも、誰も動けない。

動いたのは――裕大だけだった。